【宝塚】星組大劇場公演「眠らない男ナポレオン」
2014-01-20


宝塚は本来叙情詩を演じる劇団であり、こうした叙事詩に興味がない方にとっては良い悪い以前の問題でしょうし、恐らくそういう方は結構いらっしゃるでしょう。
その意味では好き嫌いが別れる作品だと思いますが、僕はこういう規模の大きな叙事詩は大いに好きなので、劇団及び小池先生の試みは評価します。

物語に関しては、よくもまあこれだけのボリュームのものを2.5時間まで圧縮したもんだと感心するばかりです。
必然的に展開が速いので、かなり一生懸命見ないと話を追い掛けるのが大変です。
キャラクターも多く、予め誰が何の役なのかを憶えておく必要があり、星組のことをそこそこ分かってないとかなり辛いと思うので、ご新規さんには非常に優しくない作品です。
僕は時代背景もそれなりに知っているし、星組は若手を含めてそれなりに頭に入っているので、幸いにしてそうした意味で困ることはありませんでした。

ストーリーの中身は、展開は早いものの過不足無く上手くまとまっていました。
ナポレオンとジョセフィーヌの愛憎もきちんと描かれていて、ロマンスの要素も十分だったと思います。
ただ、皇帝に即位してから転落するまでのナポレオンの増長と周囲の離反については、さすがに展開が速過ぎて分かりづらかったです。
もう少しマルモンの葛藤や周囲との軋轢をはっきり描いた方がよりドラマチックになったと思います。
予定調和に向けてするすると話が進んでいってしまった印象があります。

キャラクターでは、ちえねねのすばらしさは改めて言うまでもありません、
この二人だからできた演目で、他の組ではまず無理でしょう。
とくにねねちゃんの貫禄の演技はさすがでした。
メイクも少し老け気味にしていましたし、年下のナポレオンを翻弄する大人の色気も、年齢故に愛を失うことを恐れる不安も、見事に演じきっていました。

個人的に良かったのがさゆみ。
今までは、彼女自身のキャラは別として、男役としての彼女にはあまり魅力を感じたことがなかったのですが、マルモンは非常に良かったです。
若い頃のお人好しでちょっと抜けている感じもよかったし、終盤のナポレオンを連行するシーンでの苦渋に満ちた演技も素晴らしかったです。
えらそうかもしれませんが、一皮むけたような気がします。

その他では、タレイランのみっちゃんがすごく魅力的でしたね。
ことちゃんもキャラと役柄が良くあっていたと思います。
エジプト遠征のシーンで、ベリーダンサーに迫られてきょどることちゃんは可愛かったです。

いただけないのは、一人二役は良いのだけど、バラスで失脚したヒロさんがフランツT世で出てくるのと、シェイエスで失脚したさやかさんがメッテルニヒで出てくること。
どちらもストーリー上重要な役なので、え?となります。
あとは根本的な話になりますが、これだけベルばらを再演しまくっているなかで、さらに「アンドレア・シェニエ」に本作品と、革命期のフランスを舞台にした演目が多すぎて、そろそろ食傷気味です。
ドラマを作りやすいのは分かりますが、もうちょっと目先を変えて欲しかったと思います。

衣装も超豪華でしたし、個人的にはすごく楽しめましたが、一般受けするかどうかは「?」という舞台でした。
[宝塚]

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