2013-12-26
ベートーヴェン:「エグモント」序曲
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」
指揮:エリアフ・インバル
管弦楽:東京都交響楽団
ソプラノ:澤畑恵美 メゾソプラノ:竹本節子
テノール:福井敬 バリトン:藤本淳也
合唱:二期会合唱団
「エグモント」の冒頭の和音だけで、凡百の演奏との違いを見せつけます。
彫りが深く、豊かな深い響きに魅了されます。
毅然としたテンポで高らかに歌い上げる凱歌には胸躍りました。
そして本題の第九。
インバルの演奏は情と理性の絶妙のバランスにあると思いますが、それが第九でも遺憾なく発揮されていました。
ただ、ベートーヴェンの音楽はそもそもが感情的というか激情的であり、フルトヴェングラーのような情一辺倒の演奏の方がより直接的に心を揺さぶることは間違いありません。
フルトヴェングラーのベートーヴェンを至高のものと考える僕にとって、完全にお腹一杯になったかといえば必ずしもそうではありません。
しかし、音楽的な充実度では比類無いものがあったと思います。
冒頭の空虚5度の背後のセカンドバイオリンはきっちりと音符通りに音を刻みます。
テンポはかなり速め。
緊迫感に満ちた展開で、展開部冒頭も力むようなことはなくサスペンスに満ちた響きで聴く者を引き込みます。
決して神経質にならないのは、内声部がしっかり響いているおかげだと思います。
そんな展開では、第2楽章が素晴らしいのは自明の理。
弦、木管、ティンパニが三位一体となり、高い緊張感を維持したまま一気に駆け抜けていきました。
第3楽章は一転して柔らかい響き。
しかし変に情緒的にはならず、美しい旋律を丁寧に紡いでいく感じでした。
この楽章は世にも稀なる美しい音楽だと思いますが、小林研一郎くらいまで粘っこくなると演歌みたいになってしまい、聴いていて眠くなってしまいますが、さすがにインバルは音楽の美しさを十二分に引き出します。
僕が実演で聴いた中では最も美しい第3楽章でした。
フィナーレは再びキリッと締まった音楽に戻りました。
過度な表情付けはありませんが、苦悩から歓喜へと階段を上り、ついに歓喜の旋律を爆発させるまでの道程はさすがの迫力でした。
合唱にも人工的な強弱はつけず、かなり力強く歌わせていました。
二期会合唱団はさすがに上手く、学生などとは安定感が違います。
これみよがしな表現はなくとも十分にテンションは膨張していき、コーダへ。
かなり速いテンポでしたが都響は全く破綻することなく全ての音符を音にして、圧倒的な音のドラマをフィニッシュさせました。
冒頭にも書いた通り、聴きながら身体が熱くなるようなことはありませんでしたが、非常に音楽的に充実しており、大いに満たされました。
あとは席が10列目とかなり前方で、前から来る音しか聞こえなかったので、ホールの響きも捉えられる位置だったらあるいはもう少し評価が変わったかもしれません。
いずれにせよ、世界最高峰のベートーヴェンを心ゆくまで堪能でき、素晴らしい一夜となりました。
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