日本フィル第331回名曲コンサート@サントリーホール
2009-05-17


1.モーツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』序曲
2.ショパン:ピアノ協奏曲第1番
3.(アンコール)ショパン:ノクターン第18番
4.ブラームス:交響曲第2番
5.(アンコール)ブラームス:ハンガリー舞曲第1番

指揮:沼尻竜典 ピアノ:三浦友里枝 演奏:日本フィルハーモニー交響楽団

2009年に入ってからというもの、一部を除いて劣悪な音響環境で、劣悪な音を聴いてきたわけで、久しぶりにちゃんとした響きを耳にしたいと思い、11ヶ月ぶりにクラシックの演奏会に足を運びました。
(前回は同じく日フィルの、小林研一郎指揮によるチャイコフスキー・ガラ。
当日のレポはhttp://reallifecreation.asablo.jp/blog/2008/06/08/の下の方)

席の埋まりは7割、といったところだったでしょうか。
日フィルの演奏会はまずコバケンが振るときしか行かないので、いつも満席というイメージしかないのですが、コバケンの指揮ではなく、演目もメジャーとは言えないときは、日曜日のマチネーといってもそんなものなのかもしれません。

2階3列目のど真ん中という位置だったのですが、さすがの良い響きに、久しぶりに耳に肥やしをやれた気分でした。
サントリーホールは、かのカラヤンのアドバイスの結果だという巨大なアクリル板(?)おかげで、1階席は音が上から振ってくるような圧迫感があるので、迷わず2階を選ぶべきでしょう。

沼尻の指揮は初めてなので、どんな音を出すのか楽しみにしていたのですが、溌剌としつつも地に足はちゃんと着いており、力任せでも軽薄なノリだけの響きでもなく、カロリー満点で大いに楽しめました。
ドイツ物にはかなり向いているように思いました。

1の冒頭の和音はフルトヴェングラー並みのパワーでした。
その後も妙にせかせかしたりせず、オーケストラをたっぷりと鳴らす立派なモーツァルトで、僕好みでした。
その後のプログラムに期待を持たせてくれます。

2は、今まで何度も実演に接してきていますが、一度も良い曲だと思ったことがありません。
何か言いたいことはあるんだろうけど、もごもご呟いているんで何を言ってるんだかよく分からない、という感じがしてしょうがないんですね。
ただ、今日の演奏は良くも悪くもひと味違っていました。

三浦のピアノは非常に小粒な音で、一音一音が非常に立っているもののffでも音量は大きくなく、確かにベートーヴェンやチャイコフスキーではなく、ショパン向きの音。
のっぺりした音ではないものの、何というか「予め考えてきた表現を舞台上で実行している」という感じで、抒情的だとは全く思いませんでした。
その点においては、中村紘子のデリカシーに欠ける演奏の方がエモーショナルと言えると思います。

一方のオーケストラ伴奏は実にきびきびとしていて鳴りが良く、初めてこの曲のオーケストレーションもまんざらでないと思いました。
伴奏はカロリー満点なのに独奏が小粒で、何だかメインはすごくこじんまりしているのに周りの付け合わせがめちゃくちゃ豪華、という感じで、お互い悪くはないものの取り合わせが良くない、という印象でした。

一方でピアノ独奏の3は非常にセンシティブで、印象的な演奏でした。
この娘(大層な美人です)は、小さいホールでのリサイタル向きだと思います。
最後の一音、ppがホールの空気に静かに消えていく様は非常に美しかったです。

4は沼尻の特長が最大限に活きた、好演でした。
世に言う「ブラームスの田園交響曲」というようなイメージの演奏では退屈して眠くなってしまったと思うのですが、沼尻は力まずにしかしオケの隅々まで鳴らしきり、ブラームス独特の重厚な響きを十二分に堪能できました。
フィナーレのコーダも、かのフルトヴェングラーの亡命前夜のライブ録音のような迫力で迫りつつ、金管の音は濁さないように気を配っていました。
ティンパニの最強打が気持ち良かったです。


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